電気化学処理によるステンレス鋼表面への高活性触媒層の生成

大規模グリーン水素製造技術としてアルカリ水電解(AWE; Alkaline Water Electrolysis)が注目されています。AWEのアノードでは酸素発生反応(OER; Oxygen Evolution Reaction)が起こり、カソードで起こる水素発生反応に対し反応を進ませるためのエネルギーが多く必要なため(過電圧が大きいため)、水素発生効率を向上し、グリーン水素の価格を下げるためのボトルネックとなっています。現在AWEのアノードには比較的OER活性の高いNi電極が使用されていますが、Niはレアメタルの一つであり高価な金属であるため、資源量豊富な元素を用いかつ高活性な電極材料の開発が求められています。
私達は、Niに対し資源量・コストの両面から優れるステンレス鋼に着目し、ステンレス鋼をAWEアノードとして実用化するための表面処理方法を開発しています。これまで、ステンレス鋼に所定の電気化学処理を施すことでNiFe水酸化物/酸化物触媒層が生成し、これが高いOER活性を有することを見出しました[7]。更に、この触媒層を有するステンレス電極は再生可能エネルギー由来の電力を用いた際に起きる電位変動を模擬したサイクル試験に対し極めて高耐久であることを示しています[8]。